
伊勢ひじき
伊勢志摩地方は風光明媚な土地で、太古の昔より山海の産物に恵まれ「美し国」(うましくに)と呼ばれており、伊勢の神宮も食糧の豊富さからこの地に御鎮座されたとも言われております。
平安時代中期の伊勢物語に(約1千年前)「女ノモトにひ志きもト云うモノヲヤルトテ…」ひじきが食された記事があります。このひじきが、通称伊勢ひじきと呼ばれるようになったそうです。
伊勢志摩地方は国内でも有数のリアス式海岸・隆起海蝕台の美しさでも知られ、岩礁の遠浅という珍しい地形です。この海岸線の岩礁に良質のひじきが繁茂しております。又、この海岸線は太平洋の清浄な海水と伊勢湾の栄養塩豊富な海水が絶妙に混ざり合う海域で、且つ外海の荒波に常に晒されています。ここで育ったひじきは、健全に成長し、実詰まりが良く、茎は太くモッチリした歯ごたえで、芽は大きく気泡が少なく、ふっくらとしたものに仕上がります。懐かしい本物のひじきです。
伊勢志摩地方で刈り取られたひじきは、北に60㎞、海路約15海里の伊勢市北部、小俣町周辺、多気郡明和町に運ばれ、そこで加工されます。近代設備が整う以前、志摩地方は、リアス式海岸・隆起海蝕台であるため、ひじきの加工には適していませんでした。
ひじき加工に適していた条件は・・・
1.好天が続き、降雨量が少ないこと
2.地盤が砂地で水はけが良いこと
3.真水が豊富に得られること
4.冬場に風が吹くこと
5.港があり海運の便が良いこと(昔はトラック等が無く大量の物資輸送は船が頼りでした)
6.労働力が豊富なこと
7.天日干しする為の広い土地
等ですが、伊勢市北部周辺は、まさにこの条件にぴったり当てはまる最適の地なのです。
さて、この地方で加工されたひじきが海路江戸に運ばれ「伊勢ひじき」として皆様に親しまれるようになりました。昔から、「日高昆布」「鳴門若布」「浅草海苔」等、産地が冠された物は人気の高さと品質の良さの証明ともなっていたようです。現在でも三重県のひじきの出荷量の全国シェアーは約7割弱を誇っております。
伊勢ひじきの製法
伊勢志摩地方に受け継がれている製法(各地で採取されたひじきを洗浄、塩抜き、ボイラーでの蒸煮、蒸らし、乾燥、芽ひじきと長ひじきの選別、異物の除去、金属探知機などの工程を施したもの)でつくられたものが「伊勢ひじき」と呼ばれています。